◇ ある声楽家の例

 

 歌唱や芝居など声を使う仕事をしている人の多くは、声の最盛期の記憶が必ず

 あるはず。そんな時代があったからこそ職業として選んだり、続けることが

 できるのではないでしょうか。

 例えばアトリエ・ドミノの受講生だった50代の声楽家の例。

 発声の問題にからだからアプローチしていくうちに、この方は10年以上前に

 声楽の先生に指導されてうまくいった時の声とからだの感覚を取り戻して、

 響きのある声が再び出せるようになりました。

 

 プロの方なので発声の技術指導はしませんでしたが、からだが変わり聴力が

 改善してくると、声は自然に良くなります。おそらく職業的な技術習得の

 過程で、耳とからだの伸びやかさを保って歌っていた頃の感覚を失っていた

 のでしょう。

 

 

 技術とからだの状態との関係はとても難しい。若い伸びやかな声と円熟した

 技術の両方を手に入れるためには、意識的な努力が必要になります。声を

 仕事にしている人たちは様々な方法で努力を重ねていますが、方法を間違え

 ると危険な場合もあります。

 

 あるいは強く大きい声=良い声だと思っていた方がからだを鍛えてつくり

 上げた、まさにその声こそが原因で耳を壊したというケースや、発声して

 いる本人の耳には響きのある豊かな良い声に聞こえても、聞き手にとっては

 押しつけがましく感じられたり、息苦しさや咳を誘発される場合も少なから

 ずあります。

 

 声は最終的には好みの問題なので一概にどんな声が良いとは言えませんが、

 自分の声を自分の耳で聞くことは不可能だという事実を踏まえ、客観的に

 アドバイス出来る人が身近にいたら助かるケースは多いのではないでしょうか。

 

アトリエどみのでは強く大きい声ではなく、耳を使った響きのある声をつくる

ために、楽器としてのからだを「調律」することから始めるレッスンをしています。

また「(客観的な)外部の耳」として、あなたの声のチェックやコントロールを

お手伝いする役目を果たすことも出来ます。お気軽にご相談ください